2018/10/31 21:25


新月の翌日から満月の前日まで続くダサイン。

 

地方からカトマンドゥへ出てきている人、ネパールから外国へ出稼ぎや留学に行っている人たちの里帰りは

7日目フルパティ辺りから加速しますが、帰省に向けた買い物ラッシュはその前から始まっています。

 

ネパールは家族主義の強い、血縁に重きを置く社会です。

ダサインは、女神ドゥルガーが悪を倒し、勝利したことを祝う、豊穣を願うという意味合いに加え、

日本の(かつての)お正月のように、家族が集まることそのものが大事にされています。

 

配偶者は、ダサインに合わせて帰省するたびに家族や親類に服やサリー(日本の

繊維メーカーが製造している薄手のサリーはシフォンと呼ばれ、軽くて着やすいと2000年代頃まで

人気がありました)を持ち帰っています。これは、お正月に新しい服を、という習慣からで

10日目=ダサミに家長をはじめ、年長の親類に祝福の印としてティカを受けるときは、

みんなそれなりに気を遣っている感のある格好をしています。

 

今年、ティカを受けるのにもっともよい時間は午前951分でした。この時間を決めるのも

ジョティシ(占星術師)です。前日、前々日あたりには、ティカの時間は何時なのかが

話題に上り、新聞やネットのニュースで調べるなど、大きな関心事になっています。

家では子どもは親から、兄弟姉妹は兄姉からティカを受けますが、ネパールは普段から

親戚づき合いが多く、濃いので、10日目以降、ダサインが終わる満月の前日まで、

移動の効率を考えながら、年長の親類縁者のところに、ティカを受けに行くのが慣わしです。

 

ただし水牛やヤギを飼い、田畑の手入れなど、日々の労働が都市部の比ではない

山村部では、ダサインは、町中のように長期にわたることはないといいます。

 

法務省が発表した数字を見ると、2017年末時点での在留ネパール人の数は8万人余り。

10年前の8000人から約10倍に増加しています。中東諸国への出稼ぎに加え、

オーストラリア、欧米を留学先に選ぶ人も多く、日本同様、ネパール国内では家事手伝いや

建築・土木作業員など、単純労働者や肉体労働者が不足している傾向が続いています。

 

わたし自身、数年前まで、ダサインは年に一度、家でカシ(ヤギ)を屠り、

ご馳走を食べる時期、という印象を持っていましたが、海外出稼ぎ就労者の増加とともに、

最近はククリでカシの首を落とせる人、解体をできる人の数が減り、カトマンドゥでは

普段同様、カシの肉を、肉屋で買う家も増えています。

 

都市部に住む、教育水準の高い若い人たちは、カシの料理は好きだけれど、

そもそも家でカシを屠ることに、さほど関心がないようです。自分で事業を起こすなど、

生活に余裕のある若い世代を見ると、ダサインの祝日にタイやマレーシアに観光旅行に

行くひとが増えているのがわかります。こうした変化を見ていると、自宅で解体したカシを

解体する(できる)家が珍しく、貴重になるのも、そう遠くはないのでは、という気もします。

 

定点観測による気づきが少なくなかった、わたしにとって29回目のネパール滞在でした。