2018/06/15 12:54

先日、日月堂で扱っているブラック リーフ ティとヒマラヤン ゴールド ティを
生産しているイラム地方マイポカリにあるジャスビレ茶園と工場の様子を
お伝えしましたが、その続きを。

友人の紹介で泊まったゲストハウスのオーナー、ディオ・クマールさんに
イラムに来た目的(紅茶の生産地訪問)を伝えたところ、〝わたしもマイポカリで
ジャリブティの栽培や有機農業をしているんですよ〟と、思いがけないことばが。
ジャリブティとは薬草のこと。ヒマラヤのハーブと有機農業、それはおもしろそうと、
今回、茶園と工場を見学した後、ディオさんの案内で、彼の農園に足を運びました。

標高1900メートルに位置する工場から、オフロードの登り坂の高度を上げること
400メートル。ディオさんが始めた〝Maipokhari Herb Organic Agriculture Farm〟は
マイポカリでも標高の高い地域にあります。

和紙ならぬネパール紙の材料で、胃腸障害に効くというロクタ、
天井や壁材として活用しているニガロ、マリンゴ、グゥンレといった笹竹類、
有機肥料の材料になるシシュヌ(イラクサ)、日本では簾や屋根材としてお馴染みで、
ネパールでは喘息の治療に用いられるという葦、
そしてコリアンダー、シナモン、唐辛子などお馴染みのスパイス類……。
なかでもディオさんが力を入れているのが、ネパール語でロート サッラと
呼ばれるインド イチイの木。村では古くから薬効の高い植物として利用されてきた
ロート サッラは、最近、ガンの治療薬としても注目されているそうで、
ディオさんも、最終的には1万5000本まで増やそうと、苗を育てています。

庇の下にロート サッラの苗があるのですが、全然見えない……

〝山村からひとが出てしまうのは村に仕事がないから。現金収入につながる仕事を
つくれば、環境のよい村を離れずに暮らしていけるはず〟。自身もグルカ兵として
20年ほどイギリス軍にいたディオさんはそう考え、有機農業に取り組み、
薬草のほか、キーウィやしいたけなど、換金作物の栽培を始めたといいます。


最近、カトマンドゥ辺りでも人気のしいたけ。夕飯に出してもらいました。おいしかったです

キーウィのシーズンは秋なので、今は棚などを整備中

〝Maipokhari Herb Organic Agriculture Farm〟では、地元住民が仕事をしているほか、
イラムで農業を学んでいる大学生たちが研修生として10名ほど滞在し、
農作業に従事するほか、牛糞や尿、植物を利用した有機肥料づくりを学んでいます。
 
木材・竹材が豊富にあるイラムでは、壁材としてこんなふうに笹竹が活用されています。
軽い手つきで竹細工をこなすこの男性。どこか知的な雰囲気があるな……と
思っていたら、普段はイラムの高校でネパールの歴史を教えているとのことでした。


割って開いた笹竹を、こんなふうに編んで壁材に


外観はこんな感じ


内観はこんな感じ。研修生が宿泊しています

マイポカリのポカリは、ネパール語で池を意味します。
ネパールでは、多く信仰の地が水辺にあるように、マイポカリも聖地として知られる場所で、
火曜日と土曜日には人々がプジャ(お祈り)に来るそうです。




最後にディオさんの農場から数キロのところにある、チーズ工場へ。
ネパールのチーズといえば、カトマンドゥの東約90キロに位置し、
スイスの支援でチーズの生産が始まったジリがよく知られていますが、
ここ〝シェルパ デイリー ファクトリー〟のご主人も、ジリでチーズづくりを学んだとのこと。


まるごと1個、チーズが買うのが夢だったといい、
4.3キロのチーズを買って大満足の我が相方


ネパールの特産品の紅茶と有機農業を組み合わせれば、
イラムにはアグリツーリズムのポテンシャルがあるはず、というディオさん。
おいしいチーズがあり、空気もよく、緑も多く、竹細工を教わることも、
もちろんトレッキングもできる。そんなマイポカリをめぐり、
まだ観光客は少ないものの、(だからこそ)訪れたひとの多くは
きっとこの地を楽しめるだろうと思いました。



ディオさんのゲストハウスに住み着いている猫たち